「非日常」が日常に。
福岡県京都郡苅田町 K様
梅雨の晴れ間に訪れたK様邸は、少し高台に建つ平屋の家。
ご主人の故郷、佐賀平野に似た見晴らしの良さと、遠くに山を望むこの場所は、ご主人がどうしてもとこだわった場所でした。
暮らしの拠点をどこに構えるか。
土地を探していた当初は、奥様はもう少し街中の方がと意見が分かれていましたが、ご主人は
「ここでなければ、家を建てること自体をあきらめて、キャンピングカーでいろんなところに出かける暮らしをしよう」
とまで考えられていました。
「リビングから山の稜線を眺めていると、なんだか守られている感じがするんです。朝、雲海のように見えることもあるんですよ。」
と、ここだから望める風景を教えてくださいました。
我が家に込めた想い
お住まいになってから暮らしは変わりましたか?の問いに、
「やりたかったことができるようになりました」と言いながら、ご主人が一冊のノートを見せてくださいました。
このノートは、ご主人が実践したいことを記す「やりたいことノート」。
開いてみると、そこには本棚やテレビボード、キッチンカウンターなど、材料や寸法が細かく描かれ、
部屋を見渡せばそれらが完成品となって、暮らしに溶け込んでいます。
「不便で手間のかかることに、豊かさがあるように思う」と、畑で野菜を育てたり、
何かを作ることを満喫されています。
実は、このノートには、建てる前に思い描いた家も記されていました。
「ノートの中では、もう5軒は建てましたね」と笑う奥様。
お聞きすると、二階建ての家も考えたそうですが、風が強く吹く土地ということもあり平屋に。
でも、お子さんたちの唯一のリクエストは『二階建て』だったそうで、
「ロフトで勘弁してもらいました」と笑顔で当時を振り返ります。
『どんな家にしようか』と考えたときに書き出したマインドマップには、
家族の暮らしへの思いと願いが込められているよう。
どう暮らしていきたいか、じっくり家づくりに向き合い形にできたK様邸。
「住み始めてから”こうすればよかった”と思うことが一つもないんですよ」と
二人で口を揃えておっしゃいます。
非日常が日常に。
お話を伺っている間、外からは絶えず小鳥のさえずりが聞こえ、まるで森の中にいるかのように心地よい。
「でも、キジやカラスもいるから、庭にテントを張って寝ていると、朝4時ごろから鳴き始めて、うるさいんですよ」と奥様。
そんな自然豊かな場所だから、新型コロナウイルスで自粛の最中も、周りを気にせず散歩したり、
お子さんも庭で思いっきり遊ばせることができ、「本当にこの家でよかった」とご夫婦でしみじみ感じたそうです。
「季節ごとの行事は大切に」と、奥様のお母様が届けてくれた大きな笹。
早速、お子さんたちと一緒に七夕飾りを作り、娘さんが、弟、お父さん、お母さんの分の願い事を短冊に書いてくれます。
「お母さんは、なんて書く?」と娘さんが聞くと、ほんの少しだけ考えて
「みんなが笑っていられますように、かな。」
ダイニング横の土間は、ご主人の作業場。本当はもっと広く作りたかったそうですが、
「小さい家の勧めにならってやめました」と笑うご主人。
今は部屋から繋がるようなウッドデッキ作りもやりたいことの一つとか。
これからもノートにはいくつもやりたいことが追加されるたびに、
家族の笑顔も増えていくのでしょうね。
(取材/2020年初夏)
写真家のいわいあやさんによる動画「おうちがいちばん」でもK様の暮らしぶりがご覧いただけます。