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忘れかけたお茶の時間を、もう一度。
湯をそそぎ、茶葉がひらく。
ほんの少しの時間に交わした言葉が、人と人を繋いでくれる。
何かと慌ただしい春だからこそ、ゆっくりとお茶を味わい、会話を楽しむ。
お茶時間をはじめてみませんか。
お茶の時間を、もう一度。
日本は、昔は大家族で、誰かが大きな茶瓶で淹れてくれたお茶をみんなで飲んでいました。
茶柱が立てば喜び、そっと飲んだ思い出も。
核家族になると忙しさの中、お茶を淹れる時間を持てずにいる人も多いことでしょう。
そんな今、外国では日本茶の文化が広がりを見せ、ここ数年、日本茶専門のカフェなど若い世代を中心に日本茶を飲む人が増えています。
今回尋ねた、奥八女にある茶園「お茶の千代乃園」。生産者の原島さんは、お茶の勉強に中国や台湾へ行かれることもあるといいます。中国や台湾は、その家の主人がお茶を振るまい、なくなればすぐに注いでくれる。
「お茶は、喉を潤すだけでなく、お茶を淹れる間に会話し、人を繋いでくれるもの。忙しい時代だからこそ、ゆっくりお茶を楽しむ時間を持ち、できれば男性にも淹れてほしいと思っています。『おーい、お茶』と淹れてもらうのではなく自分で。男性は凝り性が多いですから、のめり込むかもしれませんね」
オーガニックのお茶づくり
取材に訪れたのは3月初めの暖かな日でしたが、標高600m近くの八女市矢部村では、まだ少し肌寒さが残ります。
千代乃園の茶畑はその標高から、冬は真白な雪をかぶり冬を越し、通常4月半ばから始まる新茶の茶摘みも、2週間ほど遅れてGWからはじまるといいます。
山の中に点在している十数箇所の畑は、平野より芽吹きは遅いものの、害虫が少ないとのこと。夏に一度だけ薬を散布する減農薬で栽培していましたが、2015年に日本より残留農薬に厳しいEUの基準を満たすオーガニック栽培に切り替えました。
農薬や化学肥料の散布を行わない有機栽培に、初めは害虫や病気の被害で苦労したそうですが、害虫の天敵が現れるなど良い変化も。「お茶も、もう構ってもらえないと思ったのかな。茶の木自体が強くなりました」と、笑う原島さん。とはいえ、畑の場所や年によって、出来や収穫量に差がでたり、畑や製品化したお茶の管理など、オーガニック認証には通常の何倍も手がかかるといいます。それでも、美味しく安全なお茶を目指し、自然を受け入れながら有機栽培のお茶づくりに日々奮闘されています。
お茶と味わう
丹精込めて作ったお茶を、一番美味しい飲み方で楽しんでほしいと、2019年にオープンした「茶寮 千代乃園」。以前は蕎麦屋だった建物を改装し、茶器や料理に使う器も親戚から譲り受けた懐かしいもので統一されています。素朴なお惣菜やお茶を使った優しいおやつなど、奥八女のおばあちゃんたちの食文化も伝える場所です。
食前にいただいた小さなグラスのお茶は、茶葉の上に置かれた氷が溶け、ゆっくりと抽出された氷出し茶でまるで出汁のように旨みが凝縮されています。食事中には煎茶、食後の甘いものに和紅茶と、相性のいい組み合わせのお茶を楽しむことができます。
お茶それぞれに合った淹れ方はあるけれど、自分が美味しいと思える淹れ方でいいと言う原島さん。「朝の忙しい時は、沸かしたばかりのお湯でさっと淹れる。熱いお湯で30秒ほどで淹れると、香りが立ち爽やかな渋み。少し湯を冷ませば甘みが増し、冷たい水で淹れればまろやかでカフェインが少なく子どもも飲むことができます。」
お茶は、もっと身近で気軽なもの。
茶葉が開くその時間を味わいませんか。
お茶の千代乃園 原島政司さん
(生産者/日本茶インストラクター)
おいしい安全なお茶づくりのために、毎日山の茶畑で奮闘中。
最近では煎茶道師範免状を授かり、日々お茶の楽しみ方や可能性を
研究中です。「農林水産大臣賞」を3回受賞。
茶寮 千代乃園
《定 休 日》火曜・水曜・不定休
《営業時間》11:00ー16:00(L.O)
ご来店の際のご予約・お問い合わせはLINE・お電話にてご連絡をお願いいたします。
▶︎お茶の千代乃園 https://chiyonoen.jp/#