作品を産み出す作家の手しごと展(シリーズ 第一回)
未来工房通信
ごはんの種をまく日々
未来工房の家づくりにも通じる、料理研究家渡辺貴子氏の「食」への想い。
行き着いたのはやはり、人の手でつくる手料理でした。
そんな渡辺貴子氏の想い、開催されている料理教室の様子を取材しました。
原点は「食いしんぼ、美味しんぼ」
〝おいしものが食べたい!〟行き着いた先は、手間ひまをかけた、誰かに食べさせたい、次の世代に遺したいと思える、手料理。手間ひまの中に豊かさが生まれ、料理を通して人との交流が生まれる。
人の生きる力が育まれるような、そんな手料理を追求しているという渡辺さん。「それが日常であってほしい」と語る。
手間ひまをかけて引くお出汁
人を繋ぐ、人と繋がる
毎日の食事の裏側にある、季節の風景や生産者の姿に思いを馳せると、食事の時間がもっと豊かになる。簡単に食べ物が手に入るようになった今、それは意外と難しいことになっている、と感じている渡辺さん。だから、地元食材を使った商品開発も手がけているという。農薬を使わず栽培した野菜チップス、地元の素材にこだわったグラノーラ、形が不揃いの果物はコンフィチュールやドライに。
「新たにドライの機械をを導入して、葉物などいろいろ試してみているところ」と、差し出されたのは、青汁などの原料になるケール。噛むとパリパリと音がし、濃厚な味。「しっかり味がするでしょ?」と、嬉しそうな渡辺さん。その笑顔は、「伝える役目」という使命感を、楽しんでいるようだ。
食材、うつわ、道具…
その使い方まで伝えたい
渡辺さんが主宰する料理教室「ごはんの種をまく日々」では、ただ「料理を習う」のではなく、食材の選び方や、包丁や鍋の使い方、器とテーブルコーディネートと、料理が楽しい!面白いと感じる様々な要素を伝えている。
この日使う汁椀は、漆塗りに金箔のあしらいもの。「この器は、強くこすると模様が取れてしまうので、洗剤を使わずに手で優しく。水で落ちるものはこすり洗いで十分」との言葉に、なんでも洗剤を使わなくてはと思い込んでいることに気付かされる。
昆布と鰹節で引く出汁の香りに包まれ、調理途中のひよこ豆をみんなでつまんで本来の味を知る。葉っぱや梅の花など、庭に訪れた季節を添え、もてなしの心を伝える。 料理だけではなく豊かな食卓を学ぶ教室だ。
「買うことを勉強する」という時代
「今はとても便利な時代。いつでもどこでも、食べ物が手に入る。だからこそ自分の軸を持たなければ、と思うようになった」と言う。情報過多な時代だからこそ、取捨選択する目を養って、適正な理由、適正な価格のものを「買う」選択をしたい。それは、その食事がどんなふうに育てられ、どんな人の手をわたってきたのか、背景を知ることから始まる。 渡辺さんの、生産者と消費者を繋ぐ仲介者でありたい、との信念が垣間見えた。
料理研究家・フードアトリエ湖舟代表
渡辺 貴子(Takako Watanabe)
大学卒業後、社会人を経て沖縄で本土料理を覚え、あべの辻調理師専門学校を卒業。
大阪・本吉兆で働く。福岡にて調理製菓カフェ専門学校にて料理担当、カフェ科担任などに就く。
[活動]
・レシピ開発、商品開発、フード撮影、出汁セミナー、久留米ふるさと納税ギフト商品開発、コラム掲載
・料理教室主催「ごはんの種をまく日々」 一般料理、男性入門料理、セミナー、出張料理、お弁当作りなど出汁講座活動、お菓子作り、ハーブ・スパイスなどにも精通。筑後日本酒会 ほか企画実施
[資格]
調理師、フードコーディネーター、野菜ソムリエ、スパイス&ハーブ検定、カツオマイスター、など